時空の彼方へ時空の彼方へ
アーティスト:ケミカル・ブラザーズ
販売元:EMIミュージックジャパン
発売日:2010-06-09
おすすめ度:5.0
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ケミカルブラザーズの新作。
実は自分は彼らのアルバムは「COME WITH US」あたりまでは熱心に聴いていたのですが、
それ以降「Push The Button」「We are the night」あたりは、シングル曲くらいしか聴いておらず、
近作は特に、「トータルアルバム」という聴き方はしていなかったんですが。
ベスト版の「Brotherhood」は持ってましたが、やはり「ただのベスト版」という以上の扱いはしてなかったと思います。

今回は、全曲分の映像含むDVDとの二枚組みということで手に取ってみました。

今回のアルバム、かなりサイケデリック度が高いなという印象を持っています。
唯一デジロックな(あと、「移民の歌」っぽい)リズムを持つM5「Horse Power」以外は、
リズムはあっても、ゆるいロックみたいなリズムだったり、THE WHOの「Baba O' Reily」なM2「Escape Velocity」のように、テクノな高揚はあってもリズムはシンプルにとどめられていたりしています。
前情報として、彼らがアルバムリリース前に、アナログ限定でフロア向けのテストトラックとしてリリースしている「Electronic Battle Weapon」シリーズのような出来になっているという情報を得ていたのですが、自分としてはかなり印象が違います。
もっとブロックロッキンビーツな、ガツンとくるブレイクビーツものは影を潜め、人肌のぬくもりや、温かい音色を中心に据えた、サイケデリックな作品という印象です。
なので、遠くで聴こえるコーラスのような、力を抜いたボーカル、
エレキギターのスライドのような音色、シンセのパッド、
生の手触りを残したドラムや、つつましく鳴るリズムマシンの音、
巧妙に仕掛けられたサウンドエフェクト
そして何より、浮遊感のあるメロディーに耳を奪われます。

生音を中心としたダンスミュージックということで思い出すのが、北欧系ディスコ・ダブなどですが、
その二大巨頭、LindstromとPrins Thomasが、早速シングル曲「Swoon」のリミックスを公開していることから、もしやこちらからの影響もあるのだろうかと考えています。
そして映像の方ですが、こちらの出来もまた素晴らしいです。
特筆すべきは、すべてのPVが連続性を持って作られているということ。
光の粒の動きを中心に、それが帯になったり、人になったり。
また、ジャケットで使われていた手法が、映像の最初と最後に現れたり、
一貫したストーリーがあったり、全体として一つの作品であるような印象を与えています。
おそらく彼らが今回意図したのは、「音と映像のトータルアルバム」ではないかと思います。
曲間はすべてDJミックスのような手法でつなげられており、音においても、映像においても、
共通したエレメントがちりばめられ、全体として1曲であるような印象があります。


ケミカルブラザーズのアルバムの中で、もっともストーリー性が感じられ、
トータルとしての完成度の高いアルバムということだと思います。