五島列島と長崎を結ぶ高速船「ジェットフォイル」などを運営する九州商船が25日、ストライキによって、五島ー長崎間を含む全便が欠航となりました。

ここに至るまで、今年夏のストライキ回避同様、多客期を狙ったストライキでありました。
今回は、実際に船を止めてしまい、実際のストライキに突入してしまいました。
ストライキ自体は一日で収束し、会社側が折れた形でストは終わりました。
本日は通常通り運行されたそうです。

ストライキが行われる間、労働組合側の弁護士の視点からまとめられた経緯なども読みました。その上で、五島で生まれ育ち、現在も住んでいる一島民としての視点から今回の出来事、ネット界隈で目にした事象、そして自分の考えをまとめたいと思います。




このストライキに纏わる島民の感情
 島民にとっては当然のことですが、まず九州商船が運営する福江ー長崎間の「ジェットフォイル」「フェリー」に関しては、島の主要な輸送手段であり、生命線でもあるということです。五島で少し大人になって、遊びに行くのはほとんど長崎、そしてその最も手軽な手段が、九州商船が運営する船であり、長崎市内へ出張する会社員や公務員などにとっても同様であります。それは、台風でその船が止まると、駆け込み購入との合わせ技で、途端に島の食料品の品揃えが心許なくなることからも分かります。二日も止まればパンの棚は空っぽになります。
 今回のストは「無期限」を謳っていたことから、島民の緊張は高まったことに間違いはありません。ストが行われる公算が高まった時点で、島の高校の寮に住んでいた生徒は帰宅できるように配慮されておりましたし、島民どうしの会話も「ストライキはどうなるか」「止まったらどうするのか」というのが主なものでした。
 また、この福江ー長崎間を運営しているの九州商船は、現実的な交通手段としては唯一といっても過言ではないものでした。これは何を意味するかというと、この「ジェットフォイル」「フェリー」が止まれば、実質、この島から九州へ渡ることは不可能になるということです。飛行機も安くなったとは言え、フェリーほどの旅客と搭乗させることはできませんし、予約で埋まれば終わりです。佐世保経由の船も慣れていない人には不安も多いでしょう。長崎へ通院しているお年寄り、親元を離れ本土へ通学する高校生、逆に離島留学制度を利用して島内にいる学生だっています。これが「田舎から都会へ行くバスがなくなる」という程度の問題ではないということがお判りいただけますでしょうか。代替手段は、ほとんど存在しないのです。その路線を、事実上の独占状態で運営しているのが九州商船であるということです。

 そしてもう一つ、以前知り合った九州商船に勤めていた友人と話したことが忘れられません。その方は、九州商船の社員であることを、五島では公言できないとおっしゃっていました。私はそのときその理由が分かりませんでした。しかしこのストライキが行われた今となっては、それが理解できる気がします。島民の皆さん、どう思いますか?


反発する島民、嘲笑する左翼
 このストライキに関して、身近な知り合いや、私自身のTwitterのタイムラインを埋めるのは、不安や心配を訴えるものばかりでした。それもそのはずで、家族旅行の日程の変更を余儀なくされたり、通院するお年寄りがどうなるか不安な介護職の方等いるのは、これはどこの町であっても同じだと思います。また、これがもし長期間に及んだ場合、物流がストップすることによって小売店への供給が止まること。(何せ台風で止まれば新聞すら届きません)これに対する不安は大きかったと感じました。
 ただしかし、こういった事象に私たちが慣れているのも事実です。台風にも慣れてますし、「パンがないよー(笑)」なんて全然、平気だったりもします。
 しかしこれが、島民の生命線であり、重要なインフラが、人の手によって止められているとなると、話は全然違います。しかも「無期限」ならば終わりが見えないわけで、その不安の大きさ、お判りでしょうか。
 私には、島民の人命を軽視し、(前回同様の理由であれば)わずかなボーナス増のために、島民を人質にとった暴挙にしか思えませんでした。

 私にとってさらに腹立たしかったのは、日本全国の左翼的な思想をお持ちの皆さんによる「組合がんばれ」「応援してます」「我慢しよう」といった、戦前の日本を彷彿とさせる言説に溢れた #九州商船ストライキ タグに書き込まれたツイートの数々でした。私にとってこれは、島の事情に対する無理解としか思えませんでしたし、彼らの勝利を喜べるものではありませんでした。私たちの不安など、組合の勝利の前には、大した問題ではないかのようでした。

 さらにその方々は、島民を嘲るかのようなtogetterまとめを作成し公開。決して経営者側に立つわけではない無辜の一般人のツイートをあげつらい、「組合運動潰し」とレッテルを貼ってまとめていたことです。このような私刑じみた手段を取ること自体、島民の恨みを買うと思わなかったのでしょうか?


一島民としての考えをまとめると
 私個人の考えをまとめると、やはりこのような組合を支持する気にはなれません。確かに争議権は認められた権利なわけで、ある程度正当性は弁護士さんの記事を読めば分かります。しかし、そこは重要な点ではありません。
 グローバルな考えをお持ちの左翼の皆様にとって、この田舎特有の事象は理解する必要などないローカルな事象なのでしょう。組合が勝利すれば、例え死人が出ても喜べるんでしょうか? 例えば、「集改札スト」等、島民の足に影響を及ぼすことなく、平穏に行うストライキもあるわけで、こういったことを行うつもりはなかったのか、検討しなかったのか。「島民に迷惑かけて当たり前」と言わんばかりの言説には、断固として抗議します。
 地域創生だとか、田舎に人をというような大層なお題目を掲げても、やはり田舎特有の事象は、一般的には理解できないものがあるのだと思い知らされました。
 また、この九州商船の、事実上の独占状態も、早急に解消しなければならないと思います。やはり競争のないところで企業のサービスは磨かれませんし、そのお陰で、私たちの生活は、これからも何度となく脅かされていくのだろうと思います。

ストライキが今回が最後だなんて、誰も断言できないわけですから。